それ行け・B 級衣裳道楽・補正編
「もうすぐ、肉が届くから、受け取っておいてね!」入座してすぐに、国立劇場で、楽屋受付の電話番をしていた時の指令です。
瞬間、(に、肉?って、生肉?何故に楽屋に?劇団ともなると、共同購入とかするのかしら…)と、様々な疑問がよぎりました。
10分後に、「肉屋です!」と、届けられた大きな段ボール箱。受け取って、あまりの軽さにびっくり(!)致しました。
荷物の正体は、特製の着肉(きにく)でした。
肌襦袢と衣裳の間には、体型補正のために、しばしばタオルや布団状のものを巻き付けます。
役によっては、『肌に見える肉』を特注(筋肉もりもり、刺青入り、等)することもあり、肉屋さんの出番となります。
女性の役ではほとんど特注はありませんが、補正用の着肉は、手作りのものを、皆、各種取り揃えております。
佐之育の場合、定番の、腰回り用(大、小)に加え、胸肉(?大、小)を持っています。
初めて見ると、意外に大きくて驚かれると思いますが、立派なかつらをかけるような役の場合、身体にも、ある程度ボリュームがないと、バランスが悪くなります。
変わったところでは、背中肉。これは、長屋の婆など、背中の丸くなった役の時に使います。
…とまぁ、ロッカーをかき回すと、出るわ出るわ、肉だらけです。
今は、手持ちのものを選んでいますが、入座当時は、しょっちゅう肉を縫ったり、作り直したりしておりました。(役作りは、肉作りから?)。
着肉の上に衣裳を着るのは、とても暑いです(T_T)。
せめて、自分の着物を着るときくらいは、最低限の補正で、自然な感じに着たいと思います。
が、これがなかなか難しい…。衿元がすっきりしないな、と、胸に手拭いを入れたり、帯のお太鼓の形が気になって、タオルを入れ込んだりするうち、またまた肉だらけになりがちです。思うにこれは、着物雑誌の影響が大きいですな。
あの、しわ一つない着物写真を完成させるためには、死角を洗濯バサミでつまんだり、しわになりそうなところに、綿を詰めたり…と、プロの技が駆使されているそうです。
それを、動いている人体、(しかも和服モデル体型にあらず)で実現するのは、土台無理なのですね。
昔々の写真を見る限り、着物はもっとゆったり、自由に着られていたようです。樋口一葉ありし頃の、街行く人々の写真を見たことがありますが、いかにも、「着物の中で、体がゆったり遊んでいる」感じです。
ゆったり着付け、を推奨するような、着物写真が増えたら、若い着物ファンも、より増えるかも知れませんね。
| 固定リンク | コメント (1) | トラックバック (0)















最近のコメント